『ふりさけみれば』


安倍龍太郎「ふりさけ見れば(下巻)」日本経済出版

 「天の原 ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出し月かも」
「この歌は、どこで読まれた歌か、君たちは知っているかな。」と、中学2年生になった僕たちに、社会科のY先生が尋ねたのは、もう半世紀以上も前でした。「春日」、とか、「三笠」と謳われているのだから、当然奈良かと、思ったのですが、「この歌は、唐で読まれたんです。」と言われたので、「へえ」と、思ったものです。初めて、遣唐使とか、長安といった単語を習った頃です。もちろん阿倍仲麻呂という名前も、百人一首で聞き齧った程度でした。
 そんなことを懐かしく思い出しながら、日経新聞の連載を読んでいたのももう数年前になりますが、今回改めて読み直すことができました。
 実際の阿倍仲麻呂の生涯はもちろんこのような波瀾万丈のものではなかったろうと分かっていますが、もともとこの時代の、しかも唐の社会のことなどベースになる知識が皆無に等しいので、読み進めるにつれてそうであっても不思議でないから、そうだったろうか?と思ってしまいすっかりストーリーに翻弄されてしまいます。そしてそのようではなかったとしても、天平時代にこんな国際的なヒーローが存在したとは、と目を見張る思いです。


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